胡桃林の寝子日和。
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- 決意、みたいなもの。 -
2011年 03月 06日
床敷きの布団から上半身を起こすのに、頭や背中を支えてあげなくてはいけないこと。
一生懸命に話してくれようとする言葉の、聞き取れないことが増えてゆくこと。
飲み込めない唾や痰がからんで、隣にある吸引機にすら手を伸ばせないほど苦しくなること。
そして、そんな父に、母がきつい言葉を使ったり苛立ちをあらわにした態度を取ること。

全部、つらいです。

父の布団が今でも床敷きなのは、理由があります。
ベッドのほうが座ったり立ったりは楽でしょうし、電動でマットレスの角度を変えられるものならばなおさら。
でも、もともとあまり体を動かすことをしない父で(学生時代は球児だったので私が小学生になる頃まではキャッチボールの相手をしてくれましたし、病気になる前まではゴルフも大好きでしたけれど)、私の記憶にある限り、仕事から帰ってきた平日の夜や週末は、ずっとTVを見ていました。
だからこそ、今ベッドを導入してしまうと、まだ動ける状態なのに寝たきりになってしまいそうなので、なるべく『布団を片付けるから起きてね』と言える和布団を使用しているのです。
球麻痺から始まり、上半身はすっかり弱ってしまった父ですが、まだ下半身は驚くほどに元気なので(マッサージの先生にも『動きが軽やかですね』といってもらえるくらい)、何とか動けるうちは多少の無理をしてでも自力でがんばってほしいのです。

言葉は、症状が球麻痺(延髄の障害により起こる麻痺で主に下位脳神経麻痺(嚥下障害や構音障害など)を指す)から始まったため、かなり早い時期から困難となっていました。
昨年6月下旬に告知をされ、それから数ヶ月でほとんど呂律が回らない状態となり、8ヶ月経った今では、父が口癖のように言う言葉は分かるものの、ちょっとした説明(体調や便の具合、胃ろうチューブの状態など)や見ているTVについての意見などは、筆記してもらわないと通じないことのほうが多くなっています。
私が子供の頃は、無口で、女子供には関心がないというようなタイプだったようで、たまに父が声を上げて笑っていると、こっそりと布団の中で姉とびっくりしたねーなんて言い合っていたくらいです。
それでも、姉と私がそれぞれ結婚をして家を出てからは、たまの帰省時には以前からは想像がつかないくらい甘えさせてくれるようになり、父娘というよりもむしろお友達感覚な関係を築けていたように思います。
だからこそ、以前は怖いだけの父だったのが最近は一緒に笑ったり出かけたりすることが出来るようになり、うれしかったんですよね。
父も、母には面と向かっていえないことを、私や姉に漏らしたりしていたようですし、子育てにはほとんど無縁だった父がようやく私たち姉妹と近づけたように感じていた矢先のことだったので、本当に本当に、切ないです。

さらに、球麻痺の代表的な症状として嚥下障害が上げられるほど、『飲み込む』ことができなくなります。
口周りの筋肉が衰えてしまうので、下、上下の顎、さらに咽喉にわたる筋肉が意識的または無意識的に動かせなくなり、話すことはもちろん、飲み込むことさえも出来なくなってしまうのです。
だから、普段何気なく飲み込んでいる唾なども口内に溜まるので、終始唾を吐くかティッシュ等でぬぐうか、または吸引機を使用するかして、取り除かなくてはいけません。
現状は、横になっている(寝ている)時は比較的楽なようですが、それでも時折、誤嚥するのか、呼吸さえ出来なくなるほど苦しくなってしまうようで、そうなるとそばにある吸引機にさえ手が届かず、母や私が気づかなければ窒息してしまう事態にもなりかねず。
日中は、(今は)母か私のどちらかが常に父の気配を感じるところに待機しているので大事には至っていませんが、私がカナダに戻ったらどうなるんでしょうね?
訪問看護士さんやケアマネさんは、私がいなくなる(予定の)4月のはじめ頃までには、何とかもっと訪問時間や回数を増やそうとがんばってくださっていますし、それはとてもとてもありがたいことですけれど、もともと余り他人との接触を好んでしなかった両親なので、それが却って負担になってしまわないかと心配でもあります。

何よりここ最近の心配は、母の、父への態度で。
もともと『空気を読まない』父と『イラチなほどに時間を惜しむ』母なので、お互いに機嫌のいいときには問題はないのですが、何かの切欠で不協和音になると、なかなかに難しいなあなんて思っていました。
父は、鷹揚ですが他の人の都合を慮ることをしないタイプで、母は逆に、余分なことまで心配しすぎて心に余裕がなくなってイライラしてしまうタイプです。
なので、たとえば些細なことでも、父はきっちりと伝えようとして回りくどくなってしまうことが、母には『要点だけでいい』となってしまい、そのあたりの齟齬でしょっちゅう言い争いをしています。
私としては、簡潔に言えない父も、精神的なゆとりをもてない母も、どちらにも等分に非はあると思っているんですけどね。
どちらの言い分も理解できる私がいる今はいいのかもしれませんけれど、私だってずっと一緒にいられるわけでもなく、ある程度の時期がきたらカナダに戻るわけですから。
きっと娘の私が憂うほど、心配はないと思うんですけれどね…。

ともあれ。
現時点では、私は『だんなの理解を得られる限り』出来るだけのことはしようと思っています。
父も母も大好きですし大切ですから、どんなことでもしたいとは思いますけれど。
でも、同時に、だんなも私の家族であり、大事にしたい人ですので。
どちらに比重が傾くか、なんてことは計れませんが、どちらかだけを選べなんていう最悪の事態だけは避けられるよう、出来る限りのことはしたいと思います。
AかBか、じゃない。
AもBも、がいいな。

つらいことは、減らないでしょう。
むしろ、これからはどんどん増えていくと思います。
それでも、私だけがつらいんじゃない、もっともっと苦しんだ方々、苦しんでいらっしゃる方々はいるんだと自身に言い聞かせていこうと思います。
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by yuling | 2011-03-06 23:42 | ALS | Trackback | Comments(2)
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Commented by たけあ at 2011-03-08 21:36 x
なんて言ったらよいか分からないけれど、今chatさんが置かれている状況は、大変で辛いと思うから、頑張りすぎないでね。もっと頑張ろうとか思わないでね。
頑張りすぎてパンクしたら、もっと辛くなってしまいますよ。
何もできないけれど、お父様のお体が少しでも良くなる事を祈ってます。生きている限り、希望はあるから。
Commented by chat at 2011-03-09 21:55 x
頑張ってどうにかなることならば、いくらでも頑張るんですけれど。
今のところ、父の病気は治療法がないということなので、余計に頑張り甲斐がないのかもしれません。
せめて、父が何かひとつでも『こういうことがしたいから生きていたい』と思ってくれるようなことを見つけられるといいのですけれど。
お言葉、ありがとうございました。

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